3、 膜タンパク質トポロジー状態の制御メカニズムとは?
それぞれの細胞が周りを感知し、周囲の細胞と相互作用するには、細胞膜の上の「膜タンパク質(受容体や接着分子など)」が正常に機能することが重要である。当然のことながら、膜タンパク質は、細胞膜上で一定の方向を向いており、例えば、受容体の「リガンドを受け取る部分」は細胞の外に向いている必要がある。このような膜タンパク質の向き(トポロジー:細胞膜への挿入様式)は膜タンパク質によって一方向に定まっていると考えられてきた。しかし近年、同一の膜タンパク膜が細胞膜への挿入前後でトポロジーを切り替える現象(以後、トポロジー変化と呼ぶ)が見つかっており、「膜タンパク質のトポロジーは1つに定まっている」という前提が揺らぎ始めている(Mol Cell 63, 567-578, 2016; eLife 8, e40234, 2019など)。このことから、膜タンパク質は 「発現量の変化」「立体構造の変化」「局在性の変化」だけでなく、「トポロジー変化」によっても機能を変えている可能性があり、細胞生物学的に重要な研究課題として注目されている。しかし、膜タンパク質のトポロジー変化についての体系的な解析は進んでおらず、例えば、トポロジー変化の分子機構、普遍性、その生理的意義に関する研究は殆ど進んでいない。
私たちは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)関連分子の一つである小胞体膜タンパク質VAPBのショウジョウバエオルソログVap33を研究する過程で、Vap33のトポロジー状態が変化することを見出している(未発表, J Biochem 165, 391-400, 2019)。私たちは、このVap33を「トポロジー変化メカニズムを理解する上でのモデル分子」として活用し、膜タンパク質のトポロジー変化を司る分子メカニズムとその生理的意義の解明を目指している。
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